社会基盤として重要性が増す電力グリッドの物理的な性質を、しがらみの少ない個人事務所としての立場から客観的に示し、社会に貢献する
将来的には分析のみならず制約回避に関する技術紹介ができるようにしたい
事務所スタンスの考察
上記の目標設定にあたり考察した内容を以下に備忘する。
カーボンニュートラルは社会全体で取り組むべき課題であり、あらゆる手段を合理的に組み合わせて課題を解決するものであると本事務所は理解している。CO2排出の大きい電力セクタに課せられた課題は当然大きい。現状、電力セクタのCO2排出は化石燃料を一次エネルギーとした際に、これを電力エネルギーに変換する際に発生することから、CO2を排出しない一次エネルギーを利用(太陽熱発電や原子力発電、水力資源の活用、論理的な意味でのバイオマス発電)への転換を指向している。
こちらでも整理したように、電力グリッドは電力という財を輸送するものではなく、需要側での活用する各種エネルギーを電力として供給側のエネルギーを伝達するための仕組みになる。
電力グリッドは、一次エネルギーの転換を円滑に進めらるよう電力を合理的に輸送するできるようにしないといけないが、電力グリッドは繊細(送電線や変電所などごっつい設備は多くあるが、電力グリッド全体を安定に運用するには繊細な調整が必要)、かつ、多くのパラメータを有する巨大なアナログ回路であり安定に運用するには、多くの技術が必要なる。
電力グリッド分析の困難さ1
電力グリッドの複製は作れない。このため、実験が不可能であることから、運用や計画が適切であるかどうかはよく練られた数値演算(シミュレーション等)の結果と豊富な経験の技術者の考察(恣意的に見えかねない)になる。
電力グリッド分析の困難さ2
計測は電力グリッドでも重要であるが、計測結果はすでに過去のものである。電力グリッドの現象は速いので、計測結果から操作を決定することは遅きに失することがあり適切な予測技術が必要となる。
電力グリッドの物理的性質から派生する制約を分析することは専門性の高い仕事になる。しかし、社会目標を実現することが最終目標であることから、物理的性質が目標実現に対してネガティブになると、多くの議論が発生し、喫緊の課題解決に向けた足踏みが発生することが多いと考え、専門家のメッセージを正しく伝える第三者が必要になると考え目標を設定した。
予測技術については、需給調整等の個別の目的で設計することが主流であると思うが、電力グリッドを最適化するためには、真の意味でのデジタルツインを構築する覚悟が必要だと思っている。もちろん採算の問題を指摘する向きもあろう。しかしこの指摘は完全に思考停止の逃げである。コストは回避不可能な制約でなく、意思のあるところでは必ず折り合える場所に到達できる。予測技術を極めることは常に高みを目指すストレッチの代表例になると信じている。